2012/12/28

本物


【本物】
偽りやにせもの、見せかけではない、正しい姿であること。
本来の筋道であること。
また、そのさま。





大好きな歌舞伎俳優の十八代目中村勘三郎さん。


並外れたエネルギーと煌々とした明るさを持つ人柄が、
絶対に死なない人だと余計に思わせていました。




日々浸水していくように、
物事がどんどん簡略化されていると感じて恐くなった時、
十八代目が築いた歌舞伎を見れば、絶対的なパワーと正解をもらっていたんです。

本物はここにあると、その芸術が直接教えてくれていたように思います。

毎回、往復ビンタされるくらいの衝撃を下さっていたんですよ。
 「これが本物なんじゃー!」って言わんばかりに。




だから、
12月5日に、私の見る世界も大きく変化しました。
言葉では一生表現出来ない気持ちでいます。


そんな風に思った自分に、自分でもびっくりです。



私みたいな人間の価値観をも変える程の、
すごい存在の方なんです。


昨日は縁の地をお練りをして、その後に告別式が行われ、
浅草の平成中村座跡地と告別式へ行きましたがとても不思議なものでした。


綺麗な桜と共に観劇した平成中村座での勘三郎さんは、今年の春の話。


昨日のそのお練りの、賑やかな御神輿は余計に不思議に、
やっぱりお別れではない別の意思を感じるものでした。



告別式ではご焼香をさせて頂きました。
直接その場に対面した時、あまりのエネルギーに圧巻しながら。


そして約1万2千人が来場したその葬儀で、
息子の勘九郎さんと七之助さんは、
全員をひとりひとりお見送りして下さったんですよ。


ひとりひとりに目を合わせて、
初めてするようにありがとうございますと言いながら。
 
すごいですよ本当に。
自分の身体を越えているみたい。



勘三郎さんを取り巻く人々も、
ちょっと垣間見えるだけでもすごく格好良くて、
とっても眩しいのです。



涙なんか出ませんでした。
あんなにすごい姿を見せられたら、
立ち尽くしてしまったんです。




命懸けで歌を歌う私の友人は、訃報を知った直後の私に、
こんな言葉をくれました。

彼からの愛はあなたの血肉となっていて、
身体が死んでも、のこした芸術は生きていく。


本当にその通りだと思います。




お別れとは思えないのは、ずっとお慕いし続けるからでしょうね。



その意思を引き継いだ息子さん方を、また観劇させて頂きたいですし、
私に子供が出来た時は、必ず一緒に行きたい。

子供が非行に走ったら、
首根っこを掴んで引きずって新しい歌舞伎座にへ行く事でしょう。

ビンタをするかわりに歌舞伎を見せます。



その頃にきっと勘九郎さんは、
平成中村座を創り上げた頃の勘三郎さんのように、
歌舞伎を創り上げていっているんでしょうね。

だって勘三郎さんのその頃の名前は勘九郎だったのですから。

これからがとっても楽しみです。


だからやっぱり、お別れの言葉や、
過去形の言葉は言えないんです。



この映像は前代未聞の、勘三郎さん親子三人で行った「連獅子」
のクライマックス。
恐ろしいくらいにぴたりと合う息、存在感、圧巻です。